「カマスサワラ」という魚を知っていますか?

カマスもサワラも聞いたことがあるけれど、二つがつながると、急に知らない魚の名前になる。
初めて聞くと「どっちの魚なの?」と思いますよね。
海彦では、毎年10月ごろになると、島根の海でこの魚に出会います。
長くとがった口先と、調理台でも存在感のある大きな体。
魚の姿を見ると少し驚きますが、皮を炙って刺身にすると、香ばしさが加わっておいしいんです。
今回は、名前の由来からカマス・サワラとの違い、海彦で感じている味わいまで、写真と一緒にご紹介します。
読み終わるころには、この少し長い名前も覚えていただけるかもしれません。
カマスサワラとは?「オキサワラ」とも呼ばれる大きな魚
カマスサワラは、サバ科カマスサワラ属の魚です。
地域によっては「オキサワラ」と呼ばれ、沖縄では「トーサワラ」という名前でも知られています。
大きなものは全長2mほどになる大型魚。
京都府の海洋センターの資料では、世界の温帯から熱帯にかけての外洋に広く分布し、主に表層を泳ぐ魚を餌にしていると紹介されています。
普段、食卓で見る魚は切り身や刺身になっていることが多いので、元の姿を知る機会は意外と少ないものです。
カマスサワラも、ひと切れになった姿と、まるごとの姿では印象がずいぶん変わります。

写真を見ると、細長い体にしっかり厚みがあるのがわかります。
銀色に光る胴体の上には背びれが続き、すっと伸びた形をしています。
この立派な体から、お皿に載る小さな刺身が切り出される。
そう考えると、いつもの刺身が少し違って見えませんか。
料理になる前の姿を知ることも、魚を食べる楽しさの一つだと思います。
カマス・サワラ・カマスサワラは、同じ魚ではありません
まず気になるのは、カマスとサワラのどちらに近い魚なのか、ということ。
名前だけでは迷ってしまいますが、分類を見ると関係が整理できます。
島根で見かけるアカカマスやヤマトカマスは「カマス科カマス属」。
サワラは「サバ科サワラ属」。そしてカマスサワラは「サバ科カマスサワラ属」です。
つまり、カマスサワラはサワラと同じサバ科に属しています。
分類上は、カマスよりサワラに近い魚です。
ただし、属が異なる別の魚なので、サワラの別名というわけではありません。
魚の分類と聞くと少し難しく感じますが、「サワラの親戚に、カマスのような顔の魚がいる」と考えると覚えやすいですね。
また、サワラが成長してカマスサワラになることもありません。
魚には成長に伴って呼び名が変わるものもありますが、この二つは最初から別の種類です。
名前がよく似ているからこそ、知っておくと魚売り場やお店のメニューを見るときにも役立ちます。
カマス、サワラ、カマスサワラ。
似た名前の三つを並べてみると、見た目の印象と分類上の関係が、必ずしも同じではないことがわかります。
魚の名前には、こうした小さな発見が隠れています。
「オキサワラ」と書かれていても、名前だけで判断しない
東京都の資料でカマスサワラの別名として紹介されているのが「オキサワラ」です。
標準的な魚の名前とは別に、地域で親しまれている呼び名があるのですね。
今回のカマスサワラも、和名で聞くと知らなくても、別の呼び名なら聞き覚えがある方がいるかもしれません。
反対に、名前が似ているので同じ魚だと思っていた、ということもありそうです。
お店で魚の名前を聞くときは、「どんな姿の魚ですか?」と一緒に尋ねると、ぐっとイメージしやすくなります。
写真を見る、名前を聞く、食べてみる。
この三つがそろうと、初めての魚も覚えやすいものです。
カマスサワラの場合は、今回の顔の写真がよい手がかりになります。
長い口先を覚えておけば、次に魚の姿を見たときにも「もしかして」と気づけるかもしれません。
食べることから魚に興味を持つのも、楽しい入り口ですね。
なぜ二つの魚の名前をくっつけたの?ヒントは顔にあります
「サワラに近い魚なら、どうしてカマスという名前も入っているの?」
その答えを知るには、顔の写真を見ていただくのがいちばんです。

長く突き出した口先が目立ちますね。
東京都の「ぎょしょく写真館」では、サワラより口先がとがり、カマスのような頭を持つことが、カマスサワラという名前の由来として説明されています。
京都府の資料でも、カマスのような口先と、とがった歯を持つサワラの近縁の魚として紹介されています。
名前に二種類の魚が登場するのは、こうした姿の特徴が理由なのです。
カマスとサワラを掛け合わせて生まれた魚、という意味ではありません。
顔はカマスを思わせるけれど、分類ではサワラに近い。
両方の名前を聞いて戸惑うのも無理はないですね。
写真でこの顔を見てから、もう一度「カマスサワラ」と言ってみると、最初よりもしっくりくる気がしませんか。
名前だけで覚えようとするより、姿と結びつけたほうが記憶に残ります。
刺身になってしまうと、このとがった顔は見えません。
だからこそ、お皿に載る前の姿もお伝えしたいと思っています。
食べている魚にこんな顔があると知ると、一緒に食事をする人との話題にもなります。
島根では10月ごろ、海彦が秋を感じる魚の一つ
海彦が島根の海でカマスサワラに出会うのは、毎年だいたい10月ごろです。
この魚を見ると、「今年もこの時期になったな」と感じます。
カレンダーの日付だけでなく、出会う魚の顔ぶれでも季節が移り変わっていく。
海と関わる仕事をしていると、そんな秋の感じ方があります。
ここでお伝えしている10月という時期は、私たちが日々の漁や仕入れのなかで経験していることです。
島根のどの海でも同じ日に現れる、という意味ではありません。
海彦にとって、秋になると出会いを楽しみにする魚だということです。
ちなみに、東京都の小笠原諸島の紹介では、カマスサワラは一年中獲れる魚として掲載されています。
同じ魚でも、地域が違えば出会う時期の捉え方は変わるのですね。
「カマスサワラはどこでも10月の魚」とひとまとめにできないところも、魚のおもしろさです。
島根で暮らしていても、海で獲れる魚を全部知っているわけではありません。
見慣れた魚のそばに、名前を聞いたことのない魚がいる。
そんな出会いを、食事の時間にも少しお届けできたらと思っています。
秋といえば、すぐ思い浮かぶ食材がいくつかありますよね。
そこにカマスサワラという名前が一つ加わると、島根の秋の海を想像する楽しみも広がります。
カマスサワラの味は?サワラに似て、少し水分を感じる身
姿と名前がわかったところで、次は気になる味の話です。
海彦で食べた印象では、カマスサワラはサワラに似た味わいがあります。
ただ、サワラと比べると、少し水っぽく感じることがあります。
これは私たちが扱い、食べたときの感想です。
今回の魚を食べて感じた身の印象として、「似ているけれど、同じではない」とお伝えするのが近いと思います。

切り口を見ると、淡い色の身がたっぷりあります。
先ほどの迫力のある顔とは違い、こちらは料理になった姿を想像しやすいですね。
写真には皮も残っていて、炙り刺身に使う部分がよくわかります。
「少し水っぽい」と聞くと、味が物足りないのかな、と気になるかもしれません。
けれど、魚のおいしさは、脂の多さや味の濃さだけで決まるものではないと思います。
身の感じに合わせて、どう料理するか。その選び方で、食べたときの印象は変わります。
サワラと比べて優劣をつけるより、「この魚はこういう身なんだな」と味わうほうが楽しい。
知っている魚を手がかりにしながら、新しい魚の特徴を見つけるような感覚です。
そこで海彦が好きなのが、皮を残して炙った刺身。
身だけを食べるのとは違う、香ばしさも一緒に楽しめます。
皮を炙った刺身がおいしい!香りと身を一緒に味わう
カマスサワラの皮を炙って刺身にすると、ひと口に香ばしさが加わります。
サワラの炙り刺身が好きな方にも、気になる食べ方ではないでしょうか。
海彦で食べるときに楽しみにしているのは、皮と身を一緒に味わうことです。
炙った皮の香りを感じ、そのあとに身の味わいが続く。
名前や見た目を知ってから食べると、どんな魚なのかが、より身近に感じられます。
炙り刺身は、魚全体を焼き上げる料理とは違います。
表面の皮の香ばしさと、刺身の身の感じを一度に楽しむところが魅力です。
写真の切り身も、皮が付いていることに注目すると、食べるときのイメージが湧いてきますね。
最初のひと切れは、皮の香りにも少し意識を向けてみてください。
「サワラに似ているかな」「思っていたよりやさしい味かな」と、自分なりに感じてみるのもおもしろいと思います。
魚の味を表す言葉は、甘い、さっぱり、やわらかいなど、人によって少しずつ違います。
難しい感想は必要ありません。
「これ、おいしいね」と思ったあとに、どこが好きだったのかを話してみる。
それだけでも食事の楽しさが増えます。
見た目の迫力からは、強い味を想像するかもしれません。
でも、実際に食べてみると、魚の顔と味の印象は別のもの。
この違いも、カマスサワラを丸ごとの写真と一緒に紹介したかった理由です。
刺身だけではない、煮付けやフライで楽しむカマスサワラ
カマスサワラには、ほかにも食べ方があります。
東京都の資料では、煮付け、照り焼き、フライにすると柔らかく仕上がる魚と紹介されています。
皮の香りを楽しむ炙り刺身に対して、照り焼きならたれ、フライなら衣というように、同じ魚でも料理ごとに楽しむ部分が変わります。
魚の名前を覚えると、別の料理で出会ったときにも「前に食べたあの魚だ」と気づけるのがうれしいところです。
さらに、小笠原諸島には、カマスサワラなどを使った「島寿司」という郷土料理があります。
魚を醤油ベースのたれに漬け込み、わさびの代わりにからしを使って握るお寿司です。
いつもの刺身とは少し違う組み合わせですよね。
同じ魚が、別の地域では別の食べ方で親しまれていると知ると、その土地の食文化にも興味が湧きます。
沖縄の食文化の資料にも、カマスサワラなどのサワラ類を刺身やフライ、醤油漬けのにぎり寿司で食べることが紹介されています。
初めて名前を聞いた方には珍しい魚でも、地域によっては暮らしのなかで食べられてきた魚なのです。
島根で食べるひと切れから、小笠原や沖縄の料理へと話がつながる。
身近な海の魚にも、思いがけず広い世界があります。
魚の名前を知ると、刺身の盛り合わせがもっと楽しくなる
刺身の盛り合わせは、見た目の彩りや好みの味を楽しむ料理ですが、「これは何の魚?」という発見もあります。
カマスサワラの名前を知ったあとなら、皮を炙ったひと切れを見て、あの長い口先や銀色の体を思い出せるかもしれません。
お皿の上の魚と、海を泳いでいた姿がつながると、食事が少し立体的になる気がします。
魚に詳しくなくても大丈夫です。
私たちがブログでお伝えしたいのは、知識を覚えていただくことだけではなく、「へぇ、こんな魚がいるんだ」と思っていただく楽しさです。
名前、姿、季節、料理。どこか一つに興味を持っていただければ、そこから会話が始まります。
「カマスサワラって、カマスとサワラのどっち?」という、今回の最初の疑問だけでも十分です。
海彦でも、魚の名前が気になったら気軽に聞いてください。
その日の魚を知りながら食べる時間が、島根の海を少し身近に感じるきっかけになればうれしいです。
秋の海で出会う、少し不思議な名前のカマスサワラ。
次にこの名前を見かけたときは、とがった顔と、香ばしい皮の炙り刺身を思い出してみてください。

参考資料
分類や名前の由来、一般的な生態・食文化は以下の資料を参考にしています。島根で出会う時期と味、炙り刺身の感想は海彦での経験に基づくものです。
東京都「ぎょしょく写真館:カマスサワラ」
京都府「丹後の海の生き物(カマスサワラ)」
JAMSTEC BISMaL「サワラ属」
JAMSTEC BISMaL「アカカマス」
東京都「小笠原諸島の水産業」
沖縄県「沖縄の伝統的な食文化:サワラ類」
