海彦にやってきたモクズガニ。
前回は海で生まれ、川で育ち、繁殖のために再び海へ向かう不思議な生態を調べました。
さて、次に気になるのは食べ方。
せっかくなら、海彦らしい料理にできないだろうか?
ということで、今回は各地の郷土料理をヒントに、定番からオリジナルまでメニューを考えてみます!
まずはモクズガニの味を知る
蒸しガニ・茹でガニにして味見
まずは十分に加熱したシンプルな料理で、身やカニミソの状態を確認したいところ。
モクズガニはカニミソや成熟したメスの内子も食材として評価されているそう。
そして火を入れたモクズガニがこちら。

火入れしたモクズガニ。
なるほど、あの特徴的な毛の部分は(当然ながら)色は変わらず、殻の部分が綺麗な赤色に。
こうやって見るとどこに毛が生えているのか、ずいぶんとわかりやすいですね。
いざ実食
サワガニよりは大きかったものの、いざ食べようとすると、思っていたよりも小ぶり。
ズワイガニやタラバガニのように、脚や胴の身をたっぷり取り出して楽しむというより、甲羅の中のカニ味噌をメインに食べるという感じでした。
この大きさなら、身をたくさん使う料理よりも、カニ味噌を中心に生かす料理がよさそうです。
カニ味噌をどう生かすか。そして、少量の身やカニの風味をどう料理につなげるか。
ということで、今回のメニュー考案は「カニ味噌を主役に、少量の身やカニの風味も生かす」ことを基本方針にします。
モクズガニの郷土料理を調べてみた
モクズガニの味見を済ませたら、レシピ考案に進みたいところですが、その前に!
日本各地に残る郷土料理から、料理のヒントを探してみました。
調べてみると、地域は離れていても、よく似た料理があることに気づきます。
高知・鳥取・宮崎|名前は違ってもよく似た3つのカニ汁
まず見つけたのは以下の3つの郷土料理。
高知県の「つがに汁」、鳥取県の「がんちゃ汁」、宮崎県の「かに巻き汁」。
いずれもモクズガニを使った汁物の郷土料理です。
伝統的な作り方には、カニを殻ごと細かく砕き、こして汁を取り、加熱するという共通点があります。
同じカニでも、地域によって名前や味付け、合わせる具材が違うのが面白いところですね。
高知県「つがに汁」
高知県などでは、モクズガニを「ツガニ」と呼びます。
つがに汁は、カニの風味を汁に生かした郷土料理。味付けや具材には地域・家庭による違いがあります。
農林水産省「つがに汁(高知県)」
鳥取県「がんちゃ汁」
お隣の鳥取県にも、モクズガニを使う「がんちゃ汁」があります。
農林水産省が紹介する作り方では、カニを砕いてこした汁に、ナスやねぎなどを合わせます。
高知のつがに汁と共通する部分がありながら、野菜を組み合わせる点が料理のヒントになりそうです。
農林水産省「がんちゃ汁(鳥取県)」
宮崎県「かに巻き汁」
宮崎県の「かに巻き汁」も、モクズガニを使う郷土料理。
この地域では「山太郎ガニ」とも呼ばれています。なんか人みたいで面白い。笑
農林水産省に掲載されている基本レシピは、モクズガニ・味噌・水を使う味噌仕立てです。
農林水産省「かに巻き汁(宮崎県)」
3つのカニ汁、どこが違う?
共通するのは、モクズガニを細かく砕いてこし、汁として味わう伝統的な調理法。
なるほど、あのカニの味噌を活かすならその方法にたどり着くのか・・・と昔の人々の知恵に感心。
一方で、宮崎のかに巻き汁は味噌仕立て、高知のつがに汁は地域によって味付けや具材に幅があり、鳥取のがんちゃ汁にはナスやねぎを使う例があります。
同じ食材でも、土地ごとの食べ方がある。 郷土料理を調べる面白さを感じます。
※なお、これらの料理が同じ起源から広まったかどうかは確認できていません。
佐賀県「つがにめし」|汁物とは違うカニの楽しみ方
汁物だけでなく、佐賀県にはモクズガニを使った「つがにめし」もあります。
カニの風味をご飯に生かす郷土料理で、海彦で出している旬魚の炊き込みご飯を応用できそう。
カニを主役にして、季節野菜を引き立て役として入れてみる。そんな土鍋ご飯も考えてみたくなります。
農林水産省「つがにめし(佐賀県)」
参考にしたい別のカニ料理|鳥取県「親ガニのみそ汁」
もう一つ参考になったのが、鳥取県の「親ガニのみそ汁」。
こちらはモクズガニではなく、雌のズワイガニを使う料理です。
大根などの野菜とカニを組み合わせる発想は、モクズガニの新メニューにも応用できるかもしれません。
農林水産省「親ガニのみそ汁(鳥取県)」
郷土料理や海彦既存メニューをヒントに考えたレシピ7品
実食して分かったのは、身をたっぷり使うよりも、甲羅の中のカニ味噌を生かしたいということ。
その方針に、各地の郷土料理で見つけたアイデアなどを組み合わせ、7つのメニュー候補を考えました。
① モクズガニの濃厚だしにゅうめん
宮崎のかに巻き汁の基本レシピとは別に、農林水産省が「飲食方法」で紹介している麺を加える食べ方から着想した、海彦のアレンジ案です。
カニの風味を生かした温かい汁にそうめんを合わせ、針しょうがと青ねぎを少量。
締めに欲しくなること間違いなしなレシピです。
② モクズガニと白身魚のふわふわ真薯椀
宮崎県の「かに巻き汁」から着想を得た一品。
かに巻き汁では、カニの成分が加熱によっておぼろ豆腐のように固まり、ふわふわとした食感になると紹介されています。
この特徴が面白い!
そこで考えたのが、白身魚のすり身を土台に、モクズガニのカニ味噌や取り出せた少量の身を生かす真薯椀です。
身を大量に使わずに、カニの存在感を出せるかがポイント。白身魚はふんわりした食感を支える役にします。
かに巻き汁とは異なる調理方法ですが、カニの風味と柔らかな食感を楽しめる、海彦らしい椀物にできないだろうか?
ぜひ試してみたい料理の一つです。
③ モクズガニのカニ味噌クリームコロッケ
海彦で大人気のイカ墨クリームコロッケの発想を応用。
カニ味噌を中心にベシャメルソースへ合わせる案。身が取れれば少量加える程度にして、カニ味噌の風味を主役にしたいです。
カニ味噌の量や風味がソースに埋もれないかは、試作して確かめたいところです。
④ 大根のモクズガニあんかけ
鳥取の親ガニのみそ汁に見られる大根との組み合わせをヒントに、柔らかく炊いた大根へカニの風味を生かしたあんをかける案。
大根はカニの風味を受け止める役。
大根を炊けるくらいの出汁がモクズガニからとれるのか、カニの身はしっかりとれるのか。
ここが勝負になってくるか。笑
⑤ モクズガニのカニあんだし巻き
いつもの大人気だし巻き卵に、カニの風味を生かしたあんをかけるメニュー。
卵の味を控えめに調整し、カニ味噌を生かしたあんで存在感を出せるかがポイント。少量のカニでも一皿にできるか試してみたいです。
⑥ モクズガニと季節野菜の土鍋ご飯
佐賀のつがにめしをヒントに、モクズガニを主役にした土鍋ご飯を考えました。
カニ味噌や安全に取り出せたカニの風味をご飯に生かし、少量の身でもカニの存在感がある土鍋ご飯を目指します。
合わせるのはゴボウやキノコなどの季節野菜を少量。
香りが強すぎる食材は控え、カニを主役にできるか試したいところです。
⑦ モクズガニの甲羅焼き
甲羅の中のカニ味噌を、そのまま主役にできる一品。
十分に加熱したカニ味噌に、取り出せた身があれば少量合わせ、甲羅を器にする案です。
味噌などを加えるかどうかも含め、日本酒に合う仕上がりを試してみたいところ。使えるカニ味噌の量や下処理の手間は課題です。
モクズガニの調理は安全性が大前提
モクズガニは生で食べず、十分に加熱する必要があります。
肺吸虫の感染源になることがあり、加熱不足や生のカニを扱った器具からの二次汚染にも注意が必要です。生のカニを砕く伝統的な工程を飲食店で安易に再現せず、衛生管理と殻の除去を徹底できる方法を検討します。
まとめ|川のカニから、海彦らしい一皿を
蒸しガニ、つがに汁、つがにめし、がんちゃ汁、かに巻き汁。
各地の食文化を調べると、カニの身だけでなく、風味を汁やご飯に生かす知恵が見えてきました。
実食で気づいた「カニ味噌を主役にする」という方針と、各地の郷土料理をヒントに考えたメニュー候補は全部で8品。
でも、こうして料理を考える時間も、新しい食材との出会いの楽しさです。
せっかくいただいたモクズガニ。まずは素材を知るところから始め、海彦らしい一皿につなげたいと思います!
参考資料
農林水産省「うちの郷土料理」(つがに汁・つがにめし等)、岡山県水産研究所「モクズガニ」、国立健康危機管理研究機構「肺吸虫症」など。