知り合いの漁師さんから、ちょっと珍しいカニをいただきました。
その名前はモクズガニ。

これがモクズガニ!
「モズクガニ?」と聞き間違えそうですが、正しくはモクズガニです。
カニといえばズワイガニやタラバガニ、サワガニを思い浮かべる私にとって、まず気になったのは「そもそも、どんなカニなの?」ということ。
そして、もらったはいいものの、どうやって食べるんだろうと。
そこで今回は、調理する前にモクズガニの正体を調べてみました。
川にいるのか海にいるのか、ハサミの毛は何なのか、いつ捕れるのか。
調べてみると、漁師さんからいただいた一匹のカニに、川と海をつなぐ面白い物語がありました。
※生態や漁期などの説明は、水産研究所・国土交通省・漁協の公表資料をもとにしています。
モクズガニとは?ハサミの毛が目印の大型の川ガニ
モクズガニは、河川を中心に暮らすカニの仲間。
岡山県水産研究所によると、日本では北海道から沖縄までほぼ全域に分布しています。
まず目を引くのはふさふさの毛

モクズガニのハサミや足にはふさふさの毛
いちばん目立つ特徴は、左右のハサミに生えた濃い毛。
まるで藻くずが付いているように見えることが、名前の由来とされています。
佐賀県有明海漁業協同組合によると、ハサミの毛はオスのほうがメスより多い傾向があります。
また、地域によっては「ツガニ」「ツガネ」「ヤマタロウ」とも呼ばれます。
同じカニでも、土地ごとに呼び名が変わるのは面白いですね。
出典:岡山県水産研究所、佐賀県有明海漁業協同組合
モクズガニ、実は大型!? よく見るサワガニと大きさ比較!
島根では、沢や小川でサワガニを見かけることがあります。

サワガニ。葉っぱと同じくらいのサイズ感!(イメージ)
あの小さなサワガニと比べると、モクズガニはどのくらい大きいのでしょうか?
サワガニの甲羅の幅は約2.5cm。一方、モクズガニは大きな個体になると7〜8cmほどにもなります。
甲羅の幅で比べると、なんと約3倍!
普段見かけるサワガニを思い浮かべると、モクズガニがかなり大きなカニだということが分かりますね。
川のカニなのに、海で生まれる?不思議なモクズガニの一生
今回いちばん驚いたのが、その生態です。
実はモクズガニ、海で生まれて川で育ち、大人になると繁殖のために再び海へ戻るという、ちょっと変わった一生を送るカニなんです。
川で見かけるカニなのに、生まれ故郷は海なんですね!
こうした、成長のために川へ上り、繁殖のために海へ下る生活を「降河回遊」と呼びます。なんかかっこいい。笑
海から川へ、そして再び海へ
岡山県水産研究所や国土交通省の資料では、次のような一生が説明されています。
- 河口付近の汽水域(川の水と海水が混ざる場所)や沿岸の海で交尾・産卵し、卵から幼生がふ化する。
- 小さな幼生は海水域で成長する。
- 海水域で成長した幼生が稚ガニになり、川へ入って上流へ移動する。
- 川の中で脱皮を繰り返して大きくなる。
- 川で成長したモクズガニは、繁殖のために川を下り、河口付近の汽水域や海へ移動する。
つまり、川で見つかる大きなカニも、子どものころは海で生活していたんですね。
岡山県水産研究所によると、繁殖を終えた親ガニの多くはそのまま一生を終えます。
国土交通省の資料では、河口から上流まで生息することが紹介されています。
モクズガニは何を食べる?どこに暮らす?
モクズガニは、動物質を中心とした雑食性です。
国土交通省の資料には、魚や貝の死骸などを食べることが記されています。水中のさまざまなものを利用して生活するカニなのです。
生息する場所も河口だけではありません。
河川の上流域まで広く分布することがあり、川底の石や岩などがある環境でも見られます。
モクズガニの旬はいつ?秋の漁と「川を下る習性」
モクズガニを調べると、「秋」という季節がよく出てきます。
佐賀県有明海漁業協同組合は漁期を9~12月と紹介しています。
また、岡山県水産研究所によると、岡山県内では秋から冬にかけて、産卵のために川を下るカニを対象に漁が行われます。
ここで大切なのは、全国どこでも漁期が同じとは限らないこと。繁殖や降河の時期は地域や水温などの条件によって違いがあります。
なぜ秋に漁が行われるのか。その理由の一つは、成長したカニが繁殖のために川を下るから。
カニの移動する時期を知ることが、漁にもつながっているんですね。
モクズガニと上海ガニは同じ?
モクズガニを調べると、よく比較されるのが中華料理で知られる「上海ガニ」です。
岡山県水産研究所は、モクズガニを上海ガニに近い仲間として紹介しています。
しかし、日本のモクズガニと、上海ガニとして知られるシナモクズガニは別の種類です。
似た仲間だからといって、同じカニというわけではないんですね。
ただモクズガニも、カニミソや内子(卵巣)が食材として評価されています。
モクズガニの豆知識|知ると誰かに話したくなる3つのこと
① オスとメスはハサミの毛だけで見分けるの?
佐賀県有明海漁業協同組合によると、オスはハサミの毛が多い傾向があります。
ただし、性別の判別には腹部の形も使われます。メスは腹部が幅広い半円形、オスは幅が狭い形です。
② 川を上るのは何のため?
モクズガニは海水域で幼生期を過ごした後、稚ガニとなって川へ入ります。
淡水域で成長し、成熟してから海へ戻るという生活史を持っています。
川を上るのは、この成長過程の一部なのです。
③ 川と海のつながりが大切なのはなぜ?
海で生まれた幼生が川に入り、成長した親ガニが再び河口へ移動するためです。
国土交通省の研究資料でも、モクズガニは河川と海の連続性を考えるうえでの指標種として取り上げられています。
川にいるカニですが、海の環境とも切り離せない存在なんですね。
モクズガニを食べる前に知っておきたい注意点
今回は生態と豆知識が中心ですが、食べるうえで欠かせない注意点もあります。
モクズガニは生で食べてはいけません。
国土交通省や佐賀県有明海漁業協同組合の資料では、肺吸虫の中間宿主になることがあるため、十分な加熱が必要とされています。
新鮮だから生でも安全、ということではありません。
具体的な調理方法や、お店のメニューとしてどう生かすかは、次の記事で改めて考えたいと思います!
まとめ|漁師さんからもらったモクズガニは、川と海をつなぐカニだった
最初は「モクズガニって何?」「どうやって食べるの?」という疑問から始まった今回の調査。
調べて分かったのは、ハサミの毛が特徴のカニであること、日本各地の川に分布すること、そして海で生まれ川で育ち、繁殖のために海へ戻るという独特の一生を持っていることです。
さらに、秋から冬の漁には川を下る習性が関係し、地域によってはツガニなどの名前でも親しまれてきました。
一匹のカニをきっかけに、川の生態系や漁の工夫まで知ることができました。
さて、次に気になるのはやっぱり食べ方。
海彦で出すならどんな料理がいいのか? それは次回、じっくり考えてみます!
参考資料
岡山県水産研究所「モクズガニ」
国土交通省 九州地方整備局「河川・水辺の生物図鑑 モクズガニ」
国土交通省 中国地方整備局「モクズガニ」
佐賀県有明海漁業協同組合「モクズガニ」
国立環境研究所「外国産モクズガニ属」