イサキって、本当においしいですよね。
刺身でも、焼いても、いろいろな食べ方で美味しく食べられる魚!というイメージが有ります。

細かい鱗が特徴のイサキ

イサキの炙り刺し!
それなら、捌いたあとに残る中骨などのアラからも、おいしい出汁が取れるのではないか。
そう思って、イサキの骨に塩を振り、焼いてから煮詰めて、出汁を取ってみました。

この時のアマダイの出汁は絶品でした・・・!
・・・ところが、期待していたほどの味が出ませんでした。
今回の率直な感想は、「味が薄い」。
身がおいしい魚なのに、どうしてだろう。
そもそも、イサキの出汁をあまり聞かないのには理由があるのでしょうか。
そこで、公的機関の情報、漁協が公開するレシピ、食品メーカーの調理例、うま味に関する学術資料を調べました。
確認できたのは、イサキのアラや骨を汁物に使う実例があることです。
一方、「出汁として有名ではない理由」や「今回味が薄かった原因」は、確認した資料からは特定できませんでした。
イサキの出汁は、実際に使われている
まず、「あまり聞かない」と「使われていない」は同じではありません。
調べてみると、イサキのアラを利用する方法は、水産研究所や漁協の情報にも載っていました。
三重県の水産研究所は、焼いたアラの潮汁を紹介
三重県の「おさかな図鑑:イサキ」では、下処理したアラを昆布出汁で煮て味噌汁にする方法に加え、アラをグリルで焼いてから潮汁にする方法も紹介されています。
さらに、塩焼きを食べたあとの骨にお湯をかけるスープについて、鳥羽や志摩で「医者いらず」と呼ばれると記されています。
これは地域の呼び名の紹介で、病気を予防したり治したりする効果を示すものではありません。
少なくとも、イサキの骨を汁物に使う調理は、公的機関が紹介する食べ方として存在します。今回の「骨を焼いて出汁にする」という着眼点自体には、参考になる実例がありました。
出典:三重県水産研究所「おさかな図鑑:イサキ」
明石浦漁協は、頭や骨を使ったあら汁を公開
クックパッドの明石浦漁業協同組合名義のレシピにも、「イサギ(イサキ)のあら汁」があります。
材料はイサギのアラ、水、酒、味噌。アラを湯通ししてウロコやヌメリを落とし、激しく煮立てないように加熱する方法です。
紹介文では、頭まわりの皮も使う料理として説明されています。
ここで区別したいのは、頭まわりの皮なども含むアラで作る味噌汁と、中骨などから取った出汁そのものの評価は、条件が同じではないということです。
レシピの存在は利用例の裏付けになりますが、今回の出汁が同じ味になることを保証する資料ではありません。
出典:明石浦漁業協同組合「イサギ(イサキ)のあら汁」
味の素は、イサキの骨を使うミネストローネを紹介
味の素の「エコうまレシピ」にも、イサキの骨を使うミネストローネが掲載されています。
骨に熱湯をかけ、水の入った鍋で弱火で10分煮て取り出し、その煮汁をスープに使う方法です。
ただし、この料理にはイサキの身や野菜、ベーコン、コンソメなども使われます。
骨の煮汁を料理に利用する実例であって、イサキの骨だけで濃い出汁が取れることを実証したものではありません。
出典:味の素「東京『イサキ』を『エコうまレシピ』でいただきます!」
「イサキの出汁が有名ではない理由」は分かったのか
今回調べた範囲では、イサキの出汁の知名度を他の魚と比較した調査や、普及していない理由を検証した資料は確認できませんでした。
したがって、「イサキは出汁が出ないから使われない」「骨が硬いから出汁に向かない」「ほかの魚よりうま味成分が少ない」といった説明を、事実として書くことはできません。
三重県の資料には、イサキの骨が硬く鋭いという説明はあります。
しかし、そこから「出汁が出にくい」という結論は導けません。
同じページで、骨や焼いたアラを汁物に使う方法が紹介されているからです。
価格や流通、食文化を理由として挙げることも、今回確認した資料だけではできません。
もっともらしい説明ができることと、根拠があることは別です。
現時点で言えるのは、「出汁としてあまり聞いたことがない」という私の実感がある一方、骨やアラを汁物に利用する実例は存在する、というところまでです。
身のおいしさと、出汁の味はどう考えればよい?
うま味の基本的な仕組みは、学術資料で確認できます。
『薬学雑誌』に掲載された総説「だしとうま味の食品化学」では、
うま味は甘味や塩味などと並ぶ基本味の一つで、おいしさを構成する要素
と説明されています。
また、昆布由来のグルタミン酸と鰹節由来のイノシン酸の組み合わせによって、うま味が強まる相乗効果が紹介されています。
これは出汁を考えるうえでの基本的な知識です。
ただし、イサキの焼いた中骨から取った出汁について、成分量や味の強さを調べた結果ではありません。
三重県がイサキのアラ汁に昆布出汁を使っているのは確認できますが、それだけで「イサキは昆布を入れないとおいしくならない」とも言えません。
出典:『薬学雑誌』136巻10号「だしとうま味の食品化学」(2016年)
今回「味が薄かった」原因は、まだ特定できない
今回の試作で確認できたのは、骨に塩を振り、焼き、煮詰めて取った出汁を、私が薄いと感じたことです。
この結果だけでは、イサキという魚種の特徴なのか、使った部位や量、調理条件によるものなのかを分けて判断できません。
公開されているあら汁レシピとは、使う部位や調味の条件も一致していません。
原因を確かめるには、少なくとも次のような条件を記録して、比較する必要があります。
- 中骨、頭、皮など、実際に使った部位と重量
- 骨に残っていた身の量
- 加えた水の量と、加熱後に残った煮汁の量
- 振り塩の量、焼き方、煮出した時間
- 魚の保存条件と、味を比べるときの温度・調味条件
これらは今回の薄さの原因として判明した項目ではなく、今後の比較に必要な記録です。
「焼きすぎた」「煮込みが足りない」といった原因も、現段階では断定できません。
次に試すなら、中骨中心の出汁と、頭などを含むアラの出汁を、材料重量や水量をそろえて比べる。
焼く場合と焼かない場合も、ほかの条件をそろえて比べる。
そうすれば、少なくとも私の調理条件で何が違ったのかを確認できます。
ここに書いた比較は、これから行う検証の考え方です。試作結果がすでに出ているわけではありません。
イサキのアラには使い道がある。今回の薄さは、別に確かめたい
今回調べてみて、イサキのアラを使う味噌汁、焼いたアラの潮汁、骨の煮汁を使ったスープという具体例が見つかりました。
一方で、イサキの出汁が有名ではない理由や、私の試作で味が薄かった原因を説明できる根拠は確認できませんでした。
おいしい身を食べたあとに残る骨やアラまで、うまく料理に使いたい。
今回の出汁は期待どおりにはなりませんでしたが、それだけで「イサキは出汁に向かない」と決めるのは早い、というのが調べて分かったことです。
今回の「薄かった」という実感を出発点に、条件を記録しながら確かめていきたいと思います!
調査日:2026年10月2日。試作の感想と、外部資料で確認できた情報を区別して記載しています。
公開レシピは利用例として紹介しており、魚種間の優劣を示す実験結果として扱っていません。

