あると嬉しい洋食の花形、「エビフライ」。
タラやスズキなど白身魚を使ったフライの総称、「白身魚のフライ」。
数ある魚の中で、魚の名前を冠して定番料理の座を獲得した、「アジフライ」。
考えてみると、この「アジフライ」のポジションってちょっと不思議じゃありませんか?
魚はほかにもたくさんいるのに、なぜアジのフライはこんなに抜群の知名度なんでしょうか。
もちろんほかの魚のフライもおいしくて、海彦ではアジフライに並んでサバの竜田揚げやスズキフライなどがランチの人気メニューとなっています。

左からマトウダイ、イワシ、アジのフライ
─ でも、なぜ、アジなのか。
ということで今回は、「なぜ魚のフライといえばアジなのか?」を、魚の食文化や料理の特徴、歴史に関する資料を手がかりに考えてみます。
先に答えをいうと、アジフライが定番になった背景には、アジという魚の身近さ、フライとしての食べやすさ、パン粉を使う料理の広がりが重なっていそうです。
ただし「ほかの魚より知名度が高い理由」を一つに特定できる統計や研究が見つかったわけではありません。
ここからは、確認できる事実と、そこから考えられる理由を分けて見ていきましょう。
理由その1|アジは昔から日本人に身近な魚だった
アジフライが定番になった背景を考えるなら、まず「フライ」より前に、アジそのものが日本人にとってなじみ深い魚だったことに注目したいところです。
一般社団法人・大日本水産会の魚食普及推進センターに掲載された「アジフライの日」の記事でも、アジは古くから日本で食べられてきた身近な魚だと紹介されています。
塩焼き、刺身、たたき、干物……。
アジは一つの調理法だけに頼らず、いろいろな形で食卓に登場します。
つまり、フライという調理法が広がる前から、アジを食べる土台があったわけですね。
とはいえ、「昔からよく食べられていた魚だから、必ずフライでも一番有名になる」というわけではありません。
ここは普及を考えるうえでの一つの背景です。
理由その2|アジはフライにすると魅力が伝わりやすい
外はサクッ、中はふっくら!水分量もおいしさの秘密?
アジフライの魅力といえば、なんといっても衣のサクサク感と、身のふっくら感。
このふっくらした食感には、魚の水分量も関係しているのでしょうか?
気になったので、文部科学省の「食品成分データベース」で、魚の水分量を比較してみました。
| 魚の種類 | 水分量(100g当たり) | 代表的な揚げ料理 |
|---|---|---|
| マダラ | 80.9g | 白身魚のフライ |
| マガレイ | 77.8g | カレイの唐揚げ |
| マアジ | 75.1g | アジフライ |
| マイワシ | 68.9g | イワシフライ |
| マサバ | 62.1g | サバの竜田揚げ |
こうして見ると、面白いことに気づきます。
水分量の多いマダラは白身魚のフライ、マガレイは唐揚げ、そしてマアジはアジフライとして親しまれています。
もしかすると、水分を多く含む魚は、揚げ料理に向いている場合があるのかもしれません。
もちろん、水分量が多ければ多いほどおいしく揚がる、という単純な話ではありません。
実際、水分量が比較的少ないサバも、竜田揚げにするとおいしいですよね。

鯖の竜田揚げ
魚の身質や脂の乗り方、下処理、揚げ方によっても仕上がりは変わります。
それでも、アジフライのあのふっくらした食感を考えると、アジの持つ水分も、おいしさを生み出す要素の一つなのではないでしょうか。
アジフライが定番料理になった理由を、水分量だけで説明することはできませんが、揚げ物にしたときのおいしさが、多くの人に親しまれてきた理由の一つなのかもしれませんね♪
参考資料: 文部科学省「食品成分データベース」

カラッと揚げている様子
理由その3|パン粉を使うフライ料理が広がった
ここで気になるのが、そもそもアジフライはいつから食べられていたのかということ。
先ほどの大日本水産会のページには、食品メーカーの代表者による寄稿として、アジフライは明治初期に日本で考案され、パン粉の普及とともに親しまれるようになった、という説明があります。
なるほど、もともと身近だったアジと、新しく広がっていったパン粉のフライ料理。
この二つが出会ったと考えると、今のアジフライにつながる道筋が見えてきます。
ただし、この説明だけで発祥した店や考案者、正確な誕生年まで確定できるわけではありません。
「明治初期に生まれた」という説も、ここでは寄稿者の説明として紹介するにとどめます。
また、パン粉が広まったことは魚のフライ全般にも関係するはず。
アジだけが特に定番になった理由を、これ一つで説明できるわけではないんですね。
今では町の名物に!「アジフライの聖地」松浦市
アジフライの知名度を考えるうえで、もう一つ興味深いのが長崎県松浦市の取り組みです。
松浦市の公式年表によると、2018年8月に最初の「アジフライマップ」を配布。
翌2019年4月27日には「アジフライの聖地」を正式に宣言しました。
飲食店を紹介するマップやイベントなど、アジフライを町の魅力として伝えてきたのです。
すでに親しまれていた料理を、地域の名物として改めて発信した事例ではありますが、1つの料理でここまで町おこしができるとは…。
アジフライの魅力の奥深さを感じます。
海彦のアジフライも、ぜひ食べてみてください♪
資料を調べているうちに、すっかりアジフライの口になってしまいました(笑)。
海彦のアジフライも、その日の魚の大きさや身の状態によって表情が変わります。
大きなアジを使った日は、なかなかの迫力です。

この日は特大サイズのアジフライの日でした♪
そして、アジフライと一緒に楽しみたいのが自家製タルタルソース。
衣のサクサク感と魚の旨みに、まろやかな味わいが加わります。

タルタルソースをたっぷりと♪
海彦のアジフライは、不定期でランチの定食や夜の一品として登場することがあります。
仕入れや当日のメニューによって提供状況は変わりますので、その点はご了承ください。
まとめ|なぜアジフライが定番になったのか?
今回の疑問は、「魚はたくさんいるのに、なぜアジフライはこんなに有名なの?」というものでした。
調べてわかったのは、アジが昔から身近な魚だったこと、フライにしても魅力を楽しめること、そしてパン粉を使った料理の広がりとともにアジフライが親しまれてきたと説明されていることです。
ただ、どれが決定打だったのか、ほかの魚のフライと比べてなぜ名前が広まったのかまでは、今回確認した資料だけでは断定できません。
それでも、身近な魚と料理の相性が重なり、長く愛されてきた一皿だと考えると、いつものアジフライがちょっと違って見えてきませんか?

左:アジフライ 右:サバの竜田揚げ
ところで、アジフライとほかの魚のフライ、写真だけで見分けられますか?
海彦ブログには、そんな「利きフライ」クイズもあります。よかったら挑戦してみてくださいね!


